歯科衛生士は国家資格が必要であり、取得するには多くの努力と時間がかかります。
しかし、「大変な思いをしたわりには給料が低い」「なかなか給料が上がらない」と感じる方も多いでしょう。
歯科衛生士の給料を上げる方法として有効なのは、勤務形態の再考や職場の変更などです。
本記事では収入アップを目指す歯科衛生士に向けて、給料アップにつながる具体的な5つの方法について解説します。
この記事でわかること
- 歯科衛生士の給料が上がらない原因
- 歯科衛生士の給料を上げる方法
- 他職種でも活かせる歯科衛生士のスキル
- 歯科衛生士の転職を成功させるポイント
- 他職種への転職で給料を上げた事例
歯科衛生士が他職種でも活かせる3つのスキルも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
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目次
歯科衛生士の給料は一般的な職種と比べて低い
国税庁のデータから見ても、歯科衛生士の平均年収は全職種の数字よりも低い傾向にあります。
※1日6時間、週3日勤務した場合
歯科衛生士 | 全職種 | |
正社員 | 370万円 | 523万円 |
正社員以外 | 123万円※ | 201万円 |
・国税庁|令和4年分民間給与実態統計調査
・求人ボックス|歯科衛生士の仕事の年収 の情報をもとに作成
歯科医院の収入源が診療報酬であり、個人が保有するスキルや年齢が収益に影響しないためです。
年を重ねるごと昇給するケースが少ない分、ベテランになっても給料アップは見込めないでしょう。
歯科衛生士の給料が低いのはなぜ?3つの原因を解説
歯科衛生士の給料が上がらない原因は、下記の通りです。
- 歯科業界の経営状況が厳しい
- 非正規雇用が多い
- 診療報酬が低い
収入アップを阻む理由がどこにあるか、現状と照らし合わせながら理解を深めましょう。
歯科業界の経営状況が厳しい
歯科衛生士の給料が上がらない原因の1つが、歯科業界の経営悪化です。
歯科診療所の数は、直近20年でほぼ横ばいとなっています。
帝国データバンクの調査によると歯科医院は約6万8,000件であり、約5万7,000件とされるコンビニよりも数が多くなっています。
競争率の高さゆえに、倒産や休廃業に追い込まれる歯科医院も少なくありません。
出典:帝国データバンク|医療機関の休廃業・解散動向調査(2021年)
経営状況は、歯科診療所が設立される場所によっても異なります。
東京都は人口が多く、歯科診療の需要も高い傾向にあります。
歯科診療所は約76施設と、もっとも少ない島根県の約2倍です。
競争率の高さや需給バランスの崩れで引き起こされた経営悪化は、歯科衛生士の給料にも大きく影響しているといえるでしょう。
非正規雇用が多い
非正規雇用の割合が大きい点も、歯科衛生士の給料が上がらない状況を作り出しています。
雇用形態 | 割合 |
常勤(正規雇用) | 52.3% |
常勤(任期付きなど) | 3.9% |
非常勤(パートタイムなど) | 39.0% |
その他 | 3.6% |
常勤の歯科衛生士における平均年収は、「300万円以上400万円以下」がもっとも多くなっている一方、非常勤の歯科衛生士の平均年収は「130万円以下」です。
半数近くが複数の職場で働いており、給料の支払い元が分散されるため、給与交渉がしにくい背景もあります。
- 1か所あたりの勤務時間が少ない
- 教育機会が少なく、生産性向上につながりにくい
- 実績の蓄積が常勤よりも遅く、成果をアピールしにくい
歯科衛生士の給料を上げるためには、雇用形態の見直しや待遇差の改善も重要になってくるといえるでしょう。
診療報酬が低い
歯科衛生士の給料アップが実現しにくい原因は、診療報酬が低い点にもあります。
初診料 | 再診料 | |
歯科 | 264点 | 56点 |
医科 | 288点 | 73点 |
・厚生労働省|令和4年度診療報酬改定の概要
・厚生労働省|医科診療報酬点数表をもとに独自に作成
歯科は、初診料・再診料ともに医科よりも20点ほど低いのが現状です。
1点10円で換算されるため、金額で言うと200円の差となります。
国家資格かつ医師をサポートするという点で、歯科衛生士は医科の看護師と共通しています。
しかし、勤務先の収入源が低いために看護師よりも給料が低くなりがちです。
歯科診療にかかる医療費が年々減少している点も、歯科業界の経営悪化につながっています。
歯科医院の収入が増えなければ、歯科衛生士の給料アップも期待できないでしょう。
歯科衛生士が給料を上げるために行うべき5つのこと
歯科衛生士の給料は上がりにくい傾向があるものの、本人の行動次第では給料を上げられます。
- 歯科衛生士として専門的なスキルを磨く
- 現歯科クリニックで管理職を目指す
- 組織規模が大きく経営状況が良好な歯科医院に転職する
- 非正規雇用の方は正社員と同じ給与にならないかを確認する
- 他職種への転職を検討する
給料アップを実現したい方は、自分に合った方法を見つけていきましょう。
歯科衛生士として専門的なスキルを磨く
専門的なスキルが身に付くと仕事の幅が広がり、給与交渉の材料となります。
スキルアップの手段として、資格の取得を目指すのも1つの方法です。
- 認定歯科衛生士
- 認定矯正歯科衛生士
- インプラント専門歯科衛生士
ホワイトニングやインプラントなど自費診療に関連した業務ができるようになれば、インセンティブを受け取れる可能性も少なくありません。
自身の市場価値を高め、給与交渉や転職を有利に進めましょう。
現歯科クリニックで管理職を目指す
給料を上げるために、今勤めている歯科クリニックで管理職を目指すのもよいでしょう。
管理職になれば、役職手当など追加の給料をもらえます。
スキルを身につけると管理職へ昇格する可能性が高まります。
- 課題の発見と解決に必要な「観察・分析力」
- 相手の理解・成長具合に合わせて教育する「柔軟性」
- わかりやすく説明する「語彙力」
歯科クリニックで給料以外の不満がないのであれば、上のポジションを目指すのも1つの方法です。
組織規模が大きく経営状況が良好な歯科医院に転職する
確実に給料を上げたい場合は、規模が大きく経営の安定した歯科医院への転職がおすすめです。
病院や大学病院であれば、一般の平均年収と同じ500万円以上の歯科衛生士が20%近くいます。
※「満足」「ある程度満足」の合計
年収に満足している歯科衛生士の割合※ | |
病院・大学病院 | 41.3% |
社会福祉施設 | 40.0% |
診療所 | 35.3% |
障がい者歯科診療所など | 30.3% |
地域包括支援センターなど | 28.6% |
日本歯科衛生士会|歯科衛生士の勤務実態調査報告書をもとに作成
大病院に転職するメリットは、下記の3つです。
- 昇給制度が整っているところも多い
- 福利厚生が充実している
- 症例数が多く、学びを深めやすい
給料のベースを上げつつ、定期的に昇給したい方は病院や大学病院への転職を検討しましょう。
規模が小さい家族経営などの歯科医院は、年収が下がってしまう可能性もあるため、経営体制もしっかり確認しましょう。
非正規雇用の方は正社員と同じ給与にならないかを確認する
非正規雇用の歯科衛生士は、待遇差がないかを確認しましょう。
国が定める「同一労働同一賃金」によって、雇用側は不合理な待遇差を解消する必要があるためです。
歯科衛生士の場合、経験年数が同程度であれば、担当する業務は同じケースが少なくありません。
「非正規雇用だから」という理由だけで給料が低く設定されている場合は、改善を求めましょう。
- 待遇差がある場合は、正当な理由があるかを確認する
- 正当な理由なく待遇差がある場合は、改善を求める
相談しても一向に給料が変わらない場合は、他の歯科医院や職種の変更も検討し早めに転職した方が給料改善につながるでしょう。
他職種への転職を検討する
歯科衛生士のスキルや経験を活かして、他職種へ転職するのも1つの方法です。
- 歯科技工士
- 歯科関連企業の営業や開発業
- 歯科衛生士学校の教員
- 事務職
- 介護職 など
年齢が若いほど成長が期待され、転職の成功率が高まります。
dodaによると転職成功者の平均年齢は32.歳であり、割合としては20代後半がもっとも多くなっています。
退職を決意したら早めに準備し、歯科衛生士として培ったスキルを武器に転職活動を進めましょう。
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歯科衛生士が他職種でも活かせる3つのスキル
歯科衛生士として働くなかで獲得したスキルは、他の職種や業界でも役立ちます。
とくに転職活動でアドバンテージとなる可能性があります。
- コミュニケーション能力
- チームワーク力
- ホスピタリティ精神
転職を検討している方は、自身の強みを再確認していきましょう。
コミュニケーション能力
歯科医師や患者とのコミュニケーションで培ったスキルは、他職種へ転職した際も活かせます。
- 傾聴スキル
- 言語化スキル
- 交渉スキル
対人交流が多い業種では、相手の気持ちをくみ取りながら業務を進めるうえで重宝します。
- 事務
- 営業
- 介護
- 保育
- 教育
年齢が若く未経験であっても、仕事の土台となるコミュニケーションスキルが認められれば、転職の成功率は大きく上がるでしょう。
チームワーク力
歯科衛生士は歯科医師などと連携して業務を進めるため、チームワーク力も魅力の1つです。
業界・業種問わず、さまざまなシーンで役立ちます。
- 複数人で同じプロジェクトに携わるとき
- 業務の進捗が滞っているとき
- 大きな目標を達成する必要があるとき
時には緩衝役を務めることでチーム全体の雰囲気がよくなり、働きやすさも向上するでしょう。
ホスピタリティ精神
患者のケアやサービスに関する歯科衛生士の業務を通じて養われるホスピタリティ精神も、転職時のアピールポイントです。
顧客対応が中心の職種で、大きな強みとなります。
- 接客業
- サービス業
- カスタマーサポート業
前述したコミュニケーションスキルなども持ち合わせると、貴重な人材として人事評価が高まります。
継続的に成果を出し続ければ、昇給のチャンスも訪れるでしょう。
歯科衛生士から転職を成功させる2つのポイント
歯科衛生士のあなたが不安を解消し、転職の成功率を上げるポイントを2つ紹介します。
- 歯科衛生士としての経験を振り返り自己分析する
- キャリアアドバイザーからアドバイスをもらう
若いと転職先の選択肢が広がりやすいものの、「経験不足がネックにならないか」と不安に思う方もいるでしょう。
1つずつチェックして、転職の成功率を上げていきましょう。
歯科衛生士としての経験を振り返り自己分析する
転職を成功させるためには、自己分析を通じて強みや弱みを言語化しましょう。
具体的には、歯科衛生士としての経験やスキルを整理し、新しい職種や業界でどのように活かせるかを考えます。
ポイント
- 自身の経験を洗い出す
- 具体的なエピソードを書き出す
- アピールポイントとして整理する
【ポイント1】
5W1Hに基づいて自己分析シートを埋めていきましょう。
自己分析シートは、マイナビ転職などでダウンロードできます。
5W1H | 書き出す内容の例 | 具体的な項目 |
Where | 勤務先の基本情報 | 歯科医院の規模、従業員数、理念など |
What | 扱っていた製品やサービス | 料金、満足度、他院との差別化ポイントなど |
Who | 関わりがあった人々 | 医院の関係者、患者の属性など |
How | 仕事の進め方 | 歯科指導の流れ、口腔ケアの方法など |
When | 仕事のスケジュール | 1回あたりの時間、1日あたりの対応数など |
Why | 勤務先や自分の目的 | 医院の目標、自分の目標など |
【ポイント2】
洗い出した経験にエピソードを添えながら、アピールポイントを文章でまとめます。
例文
私の長所は、人の話をよく聞くところです。
歯科衛生士としてクリニックに3年勤務し、さまざまな患者さまと触れ合ってきました。
「医師へ直接相談するのは気が引ける」という方もたびたびいたため、その都度お話を聞き、必要な対応をアドバイスしてきました。
「話しやすい」「頑張ろうと思える」といったお言葉もいただき、セルフケア意識の向上にもつながっていると実感しています。
お客様との信頼関係の構築が大切な貴社でも、強みの傾聴力を活かしていきたいと考えております。
【ポイント3】
自己分析の結果を踏まえて、自分の強みを把握しましょう。
キャリアアドバイザーに相談する
プロのキャリアアドバイザーと協力するのも、転職の成功率を上げる方法として有効です。
キャリアアドバイザーは、転職に関するさまざまな情報を提供してくれます。
- 市場の動向
- キャリア形成
- 求人情報
- 転職支援 など
自分だけでは気づけなかった、強みや弱み、適職の発見も支援してくれます。
他職種へ転職して給料をアップさせた転職成功事例の紹介
Aさんは歯科衛生士と同じ医療・福祉業界で、介護職として働いていた方です。
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残業時間 | 基本給 | |
転職前 | 15時間 | 20万円+ボーナス1回 |
転職後 | 22時間 | 22万円+固定残業代3万円 |
他職種への転職に不安を感じていましたが、キャリアアドバイザーの寄り添った支援で徐々に自信を持てるようになりました。
転職後は年収が12万円アップし、働きがいを感じながら仕事に取り組んでいます。
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歯科衛生士からキャリアアップして年収を伸ばしたいなら他職種へ転職も検討しましょう
歯科衛生士の給料が上がらない原因は、歯科医院内外の状況や雇用形態などにあります。
給料を上げるためには、下記のアクションを実践しましょう。
- 専門スキルを磨いて業務の幅を広げる
- 管理職を目指す
- 経営が安定している大病院へ転職する
- (非正規雇用の場合)不合理な待遇差の改善を求める
- より給料が高い他職種へ転職する
歯科衛生士の仕事に不安や不満がある場合は、思い切って他職種へ転職しましょう。