超高齢社会の日本において、介護職はなくてはならない職種の1つです。
しかし、需要の高さとは裏腹に「仕事量に対して、給料が見合わない」と感じ辞めようか悩んでいる人も多いのではないでしょうか?
介護職は人手不足の業界でもあり、事業所に給料アップを期待するのはおすすめできません。
本記事では介護職の給料がなぜ上がらないのかと、給料を上げる具体的な5つの方法について紹介しています。
介護職の給料が低い根本的な原因と対処法の理解にお役立てください。
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目次
なぜ介護職の給料は上がらないの?5つの原因
介護職の給料は、事業形態や国の制度などが影響して上がりにくい傾向にあります。
- 人件費率が約70%と高い
- 介護報酬が低いため、財源がない
- 専門性の低さ
- 非正規職員の割合が高い
- 内部留保額が高い
福祉特有の原因もあるため、1つずつチェックしていきましょう。
人件費率が約70%と高い
介護職の給料が上がらない原因の1つは、人件費率の高さにあります。
人件費とは労働にかかわる費用全般です。
- 給与
- 賞与
- 役員報酬
- 福利厚生費
- 退職金 など
人件費が高い状態は経営を圧迫するため、給料はなかなか上げられません。
介護職が勤める事業所では総じて人件費率が高く、低くても60%台の事業所がほとんどです。
人件費率が高い介護サービス | 人件費率 |
居宅介護 | 83.6% |
夜間対応型訪問介護 | 82.8% |
定期巡回・臨時対応型訪問介護看護 | 78.8% |
訪問介護(介護予防を含む) | 78.0% |
訪問介護 | 77.6% |
居宅介護や訪問介護は、1人あたりの業務負担が大きいわりに給料が上がらず、職員の不満がたまりやすいといえます。
介護報酬が低いため、財源がない
介護報酬が上がらないと、従業員である介護職の給料も低いままです。
介護事業所の収益源は国から支払われる介護報酬であり、金額は下記の要素で決まります。
- サービスの種類
- 対象の人数
- 提供回数
介護報酬の財源は介護保険料や公費のため、事業所側がコントロールできるものではありません。
定期的に見直されているとはいえ、まだまだ仕事量に見合っていないのが現状です。
専門性の低さ
「誰でもなれる」という点も、介護職の給料が上がらない原因の1つになっています。
介護職の求人は未経験者や無資格者でも応募できます。
安全・安心な介護を提供するためには、さまざまなスキルが必要です。
- 利用者の身体状況に合わせた「介護スキル」
- 利用者の本音を引き出す「傾聴スキル」
- 少ない職員で安全に介護する「リスクマネジメントスキル」
介護職は専門職と比較すると実労働時間数が多く、給料は低い現状があります。
※1手当金や一時金も含む
※2理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、機能訓練指導員を含む
平均給与額※1 | 実労働時間数 | |
介護職員 | 約32万円 | 163.7時間 |
看護職員 | 約37万円 | 161.1時間 |
生活相談員 | 約34万円 | 164.1時間 |
理学療法士など※2 | 約35万円 | 159.0時間 |
介護支援専門員 | 約36万円 | 163.3時間 |
介護職の専門性が目に見えにくいことも、低賃金の原因といえるでしょう。
非正規職員の割合が高い
介護職の給料が上がらない原因は、非正規職員が多い点にもあります。
非正規職員の特徴
介護職全体の平均給料が上がりにくくなります。
実際、相談員といった専門職にくらべると、パート職員や派遣職員の割合は2倍以上です。
正社員への転換を積極的に進める事業所以外は、給料が上がらない状況からなかなか抜け出せないでしょう。
内部留保額が高い
内部留保額が高いと、収益が上がっても給料に還元されません。
内部留保とは
経営の安定化に向けて利益を事業所内に留めておく資金のこと
特別養護老人ホームを調査したデータでは、定員規模が大きいほど内部留保額が大きくなっています。
経過年数が長く、安定した利益率を出している事業所も同様です。
内部留保は、昨今発生した感染症の流行をはじめ、事業所内外の急激な変化に対応するために必要な資金です。
しかし、介護業界全体として内部留保額の高さが問題視されています。
内部留保に対する姿勢を介護業界全体で見直さない限り、介護職の給料が上がる可能性は低いでしょう。
介護職の給料事情と展望について
介護職の給料は国の制度が変わることで、少しずつ上昇する可能性があります。
- 介護職員の処遇改善に関する加算
- 介護報酬の改定
介護職の給料事情と将来性について見ていきましょう。
介護職員の処遇改善に関する加算
介護職員の待遇改善を目指した取り組みを実施すると、事業所は加算の算定で収益を増やせます。
加算 | 処遇改善の対象 |
介護職員処遇改善加算 | 介護職員のみ |
介護職員等特定処遇改善加算 | ・経験や技能のある介護職員・その他の介護職員・その他の職種 |
介護職員等ベースアップ等支援加算(令和4年10月に新設) | ・介護職員・事業所の判断で、その他の職種にも配分可能 |
加算はさまざまな要件を満たす必要があり、算定のハードルが高くなっています。
加算によっては介護職以外にも配分されるため、1人当たりの昇給額が小さくなる可能性があります。
介護報酬の改定
事業所の主な収益源である介護報酬は、原則3年に1回改定され、改定の方向性によっては加算の報酬額が増加し、事業所の収益アップにつながるでしょう。
- 福祉用具費やケアプラン費の適正化
- 小規模事業者の規模拡大による業務効率化
- 多床室の室料見直し
次回の報酬改定は2024年であり、高齢者の急増と労働力減少に備えて議論中です。
介護職の平均給与は低い?他の職種と比較
介護職を含む医療・福祉業界の平均月収は約30万円となっており、他の職業と比較すると高いとは言えないでしょう。
平均給与トップ5の業界は下表のとおりです。
業界 | 平均月収 |
電気、ガス、熱供給、水道業 | 約40万円 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 約39万円 |
情報通信業 | 約38万円 |
教育、学習支援業 | 約38万円 |
不動産業、物品賃貸業 | 約34万円 |
介護職の平均給与はほかの業界よりも低く、年収に換算すると約50万円〜120万円の差があります。
給料が低いと感じながら仕事を続けても成長意欲を失い、モチベーションも低下してしまうでしょう。
給料が上がらないなら辞めたいと考えてしまうのは当然のことです。
この差を埋めるためには事業所の変化を待つだけではなく、自ら行動する姿勢も大切です。
介護職の給料を上げる具体的な5つの方法
介護職の人が、事業所に頼らず給料をあげる具体的な方法を5つ紹介いたします。
- 介護福祉士の資格を取得する
- 夜勤など手当のつく働き方をする
- ユニットリーダーなど役職に就く
- 勤続年数を増やす
- 他の職種へ転職する
実現性の高い方法から挑戦していきましょう。
①介護福祉士の資格を取得する
介護福祉士の資格取得は、給料アップに有効な方法の1つです。
資格があると、実労働時間数にほとんど差がないにもかかわらず、平均給与額は約6万円高くなります。
平均給与額 | 実労働時間数 | |
介護福祉士の資格あり | 約33万円 | 163.7時間 |
介護福祉士の資格なし | 約27万円 | 162.5時間 |
介護福祉士の資格を取得した後の変化
- 経験・技能のある介護職員とみなされる
- 特定処遇改善加算の対象となる
- 給料が増える可能性がある
加算の算定が不明な場合は事業所に確認してみるとよいでしょう。
②夜勤など手当のつく働き方をする
夜勤や遅番などのシフトを多くすると、給料アップにつながります。
22時から翌朝5時までの労働は、25%以上の割増賃金を支払うよう定められているためです。
出典:厚生労働省|介護労働者の労働条件の確保・改善のポイント7ページ
夜勤1回につき5,000円前後であり、月4回入るだけでも給料は2万円前後上がります。
訪問介護など日中のシフトが中心の職場から、介護老人保健施設など24時間体制の職場へ転職するのも1つの方法です。
平均給与額 | |
訪問介護事業所(常勤) | 275,620円 |
介護老人保健施設(常勤) | 339,040円 |
介護老人福祉施設(常勤) | 348,040円 |
夜間のシフトにのみ入る「夜勤専従」という働き方を選択すれば、より多くの収入を得られるでしょう。
③ユニットリーダーなど役職に就く
ユニットリーダーなどに着任すると、基本給に加えて役職給がもらえるようになります。
管理職へキャリアアップすれば、さらなる収入増加も期待できます。
平均給与額 | 実労働時間数 | |
管理職※ | 約36万円 | 167.4時間 |
管理職ではない | 約31万円 | 162.8時間 |
厚生労働省|令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果をもとに作成
ユニットリーダーになるには、下記の2つを満たすことが必要です。
- 介護関連の資格保有(下記のいずれか)
介護職員初任者研修
介護福祉士実務者研修
介護福祉士 - 1年以上の実務経験
責任が重くなる分、頭を悩ませる場面も増えます。
チームメンバーをしっかり育て上げることで、自身の業務負担を減らせるでしょう。
関連記事:給料が上がらないときは交渉してもいい?交渉のポイントとは?
④勤続年数を増やす
今の職場に給料以外で不満がない場合は、勤続年数を伸ばすのも1つの方法です。
勤続年数 | 平均給与額 | 実労働時間数 |
1年 | 約28万円 | 164.1時間 |
5年 | 約31万円 | 163.7時間 |
10年 | 約32万円 | 164.6時間 |
15年 | 約34万円 | 161.7時間 |
20年以上 | 約37万円 | 161.8時間 |
上記のとおり勤続年数が長くなると、給料が上がりやすくなります。
- 役職に就く
- 等級制度の級が上がる
- 実績が評価される
まずは5年勤続を目指して、心身の健康管理に気を配りながら働きましょう。
⑤他の職種へ転職する
給料以外にも職場に不満がある場合は、思い切って異業種へ転職する方法もあります。
メリット | デメリット |
・生活リズムが整う ・有給休暇を取りやすくなる ・年齢を重ねても無理なく働き続けられる | ・新たな知識や技術の習得が必要になる ・勤続年数がリセットされる |
介護職で身に付けたスキルは、ほかの職種でも土台となる大切な力です。
- コミュニケーションスキル
- タイムマネジメントスキル
- チームワークスキル
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現状を変えるためには、下記のアクションが大切です。
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- 夜勤の回数を増やす
- ユニットリーダーなどの役職を目指す
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