理学療法士は、身体に障害のある人のリハビリをサポートする仕事で、超高齢化社会の日本に必要不可欠な職業です。
重要性のわりに収入は低く、「理学療法士は生活できないからやめとけ」という現役理学療法士の声もあります。
本記事では、給料面で不満がある理学療法士の方に向けて、理学療法士の給料が上がらない理由や給料を上げる方法について解説します。
一般的な会社員や他の医療職との給料も比較してお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
理学療法士の給料が上がらなくて辛い方は、転職や副業を始めるのも一つの手です。
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理学療法士の給料が上がらない5つの理由
理学療法士の給料が上がりにくい主な理由は下記のとおりです。
- 理学療法士の数が飽和しているから
- 法律によって医療費が下がっているから
- 仕事量を増やせないから
- スキルが給料に反映されないから
- 開業できないから
1つずつ具体的に解説します。
理由①理学療法士の数が飽和しているから
理学療法士の数は飽和状態にあり、希少価値が下がっているために給料が上がりにくくなっています。
理学療法士の人数推移を表したグラフによると年々増加していることがわかります。
理学療法士の人数は今後ますます増え、希少価値が下がっていく見込みです。
医療機関としては「替えがきく」状況になっており、わざわざ給料を上げる必要がなくなっているのです。
理由②政府の施策によって医療費が下がっているから
政府の医療費削減の施策によって、理学療法士の人件費財源になる医療機関の収入が減っているのも理由の1つといえるでしょう。
現状、日本の医療費は増える一方であり、政府の医療費財源は逼迫しています。
たとえば、平成27年度には約41兆円だった医療費が、令和元年度には約43兆円と約2兆円も増えているのです。
政府は医療費削減のための働きかけを行っており、2024 年の4月からは、新たに都道府県ごとの医療費抑制策の策定を義務づけています。
医療機関は医療費の引き下げによって収入が減っているため、理学療法士の給料を増やす余裕がないのです。
理由③仕事量を増やせないから
理学療法士は理学業界のシステムによって、仕事量を増やしても収入は上がらないのです。
理学療法士の給与額は、仕事量ではなく1回20分の診療の種類に応じた点数によって決まります。
診療の種類と点数は下記の表のとおりです。
診療項目 | 点数 | 実施時間 |
心大血管疾患リハビリテーション料(1) | 205点 | 1単位20分 |
心大血管疾患リハビリテーション料(2) | 125点 | 1単位20分 |
脳血管疾患等リハビリテーション料(1) | 245点 | 1単位20分 |
脳血管疾患等リハビリテーション料(2) | 200点 | 1単位20分 |
廃用症候群リハビリテーション料(1) | 180点 | 1単位20分 |
参考:医療・介護系のお仕事に特化した求人サイト【かる・ける】
理学療法士は1回の診療中にどれほど頑張って働いても、報酬額は点数に応じて一定です。
診療の種類や回数を選べるわけでもないため、理学療法士は「沢山働いて稼ぐ」ができない職種といえます。
理由④スキルが給料に反映されないから
理学療法士は点数制によってスキルも給料に反映しにくい職業です。
20分の間にスキルを発揮して患者の満足度の高いリハビリをしても、患者から支払われる診療報酬は点数に応じて一定です。
スキルが高ければ上司から評価を受けて昇給する可能性もあるものの、医療施設に支払われる診療報酬が一定である以上、医療施設は大幅に給料を上げることはできません。
点数制によって理学療法士のスキルが給料に反映されにくくなっています。
理由⑤開業できないから
同じ医療職でも、医師や柔道整復師などの医療職は独立して高収入を目指せますが、理学療法士に開業権はありません。
理学療法士は原則的に医師の指示の元で業務を行う必要があります。
理学療法士として働くには、必ずどこかの医療機関や施設に雇用されていなければなりません。
収入を上げるためには、給料が高い医療機関や施設への転職を検討する必要があります。
理学療法士は生活できない?年収を比較
理学療法士の給料は一般的な会社員と比べても遜色がありませんが、他の医療職に比べると給与水準は低くなっています。
医療職の平均的な収入の差は下記の表のとおりです。
職業名 | 平均月収 | 平均年間賞与・特別給与額 | 平均年収 |
理学療法士 | 31万1,325円 | 76万875円 | 449万6,775円 |
会社員 | 32万8,700円 | 78万5,700円 | 472万9,900円 |
医師 | 129万2,650円 | 131万4,275円 | 1,682万6,075円 |
看護師 | 35万3,700円 | 89万4,875円 | 513万9,275円 |
診療放射線技師 | 37万7,300円 | 97万1,000円 | 549万8,300円 |
臨床検査技師 | 36万8,750円 | 101万850円 | 543万5,850円 |
歯科衛生士 | 27万8,500円 | 66万1,400円 | 400万3,700円 |
栄養士 | 25万4,900円 | 60万7,200円 | 366万6,300円 |
政府統計の総合窓口(e-Stat)|賃金構造基本統計調査より独自に作成
理学療法士の給料について深掘りし、会社員・他の医療職と比較します。
理学療法士の平均年収
賃金構造基本統計調査の資料を参考に計算したところ、理学療法士の平均年収は約450万円でした。
平均月収は約31万円、平均年間賞与・特別給与額は約76万円です。
平均労働時間は約161時間、平均残業時間は約5時間と長くありません。
理学療法士は「そこそこ稼げるしプライベートな時間も作りやすい」といえるでしょう。
職場の人数ごとの平均年収
下記の表のとおり、理学療法士は職場の人数によって収入に差があります。
事業規模 | 平均月収 | 平均年間賞与・特別給与額 | 平均年収 |
10人以上 | 30万6,700円 | 74万9,400円 | 442万9,800円 |
10~99人 | 31万800円 | 67万3,900円 | 440万3,500円 |
100~999人 | 29万9,100円 | 72万9,900円 | 431万9,100円 |
1,000人以上 | 32万8,700円 | 89万300円 | 483万4,700円 |
政府統計の総合窓口(e-Stat)|賃金構造基本統計調査より独自に作成
100〜999人の場合の給料が最も低い傾向にあります。
収入を重要視して就職・転職を行う場合は、事業規模100~999人の医療機関・施設以外を検討するとよいでしょう。
会社員の平均年収と比較
一般的な会社員の給料は、平均月収が約33万円、平均年間賞与・特別給与額が約79万円で、平均年収は約473万円です。
給料は理学療法士より少し多く設定されていますが、平均労働時間は約165時間、平均残業時間は約11時間と労働時間は一般的な会社員の方が長くなっています。
一般的な会社員に比べると理学療法士の勤務終了後の余暇時間は長いため、余暇時間を使って資格取得の学習を進めてスキルアップも可能です。
スキルを活かした転職や副業に取り組めば、給料で挽回する機会にも恵まれるでしょう。
他の医療職に比べると低い
理学療法士は他の医療職に比べると給料がやや低い傾向にあります。
医療職の平均的な収入の比較表によると、平均年収は歯科衛生士より約50万円、栄養士より約83万円高く設定されていますが、医療職の中では低めといえます。
労働時間は下記の表のとおりです。
職業名 | 平均労働時間 | 平均残業時間 |
理学療法士 | 161時間 | 5時間 |
医師 | 165.8時間 | 12.5時間 |
看護師 | 159時間 | 6時間 |
診療放射線技師 | 162時間 | 8.3時間 |
臨床検査技師 | 162時間 | 9.5時間 |
歯科衛生士 | 164.3時間 | 5.3時間 |
栄養士 | 165.8時間 | 6.3時間 |
政府統計の総合窓口(e-Stat)|賃金構造基本統計調査より独自に作成
最も労働時間が多いのは医師で、理学療法士に比べると平均労働時間は約5時間、平均残業時間は7.5時間長くなっています。
労働時間や残業時間の短さも、理学療法士の給料が他の医療職に比べて低くなっている一因といえるでしょう。
理学療法士の昇給は一定の給料で頭打ち
一般的な会社員と比べると、理学療法士の給料は上がりにくくなっています。
下記は理学療法士と一般的な会社員の昇給の違いを、年代ごとで比較した表です。
年齢 | 理学療法士 | 一般的な会社員の平均 |
20〜24歳 | 328万6千円 | 328万2千円 |
25〜29歳 | 379万6千円 | 410万2千円 |
30〜34歳 | 414万5千円 | 467万8千円 |
35〜39歳 | 437万5千円 | 521万7千円 |
40〜44歳 | 487万2千円 | 561万3千円 |
45〜49歳 | 515万8千円 | 589万6千円 |
50〜54歳 | 539万5千円 | 631万9千円 |
55〜59歳 | 575万円 | 632万6千円 |
60〜64歳 | 479万3千円 | 495万4千円 |
参考:医療・介護系のお仕事に特化した求人サイト【かる・ける】
理学療法士と一般的な会社員の給料差は、25〜29歳の年代から開き始めます。
ピークはどちらも55〜59歳で理学療法士の最高年収は約575万円、会社員は約633万円です。
理学療法士の給料は上がっているものの、一般的な会社員に比べて昇給額が低くなっています。
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理学療法士が給料を上げる6つの方法
理学療法士が給料を上げる具体的な方法には、下記の6つがあります。
理学療法士が給料を上げる方法
- 上位資格を取る
- 管理職になる
- 他の施設に転職する
- 医療関係企業に転職する
- 副業をする
- 異業種に転職する
1つずつ解説していきます。
方法①上位資格を取る
理学療法士は上位資格を取得すると資格手当による給料アップを期待できます。
理学療法士の上位資格
- 認定理学療法士
- 専門理学療法士
上記資格を取得すれば、より専門的な知識とスキルを持ってリハビリの提供ができます。
資格を取得することで、指導的な立場や役職に就く可能性が高まるため、給料アップも見込めるでしょう。
より専門性を活かせる職場へ転職すれば、収入を上げられる可能性もあります。
選択肢を広げるために、上位資格の取得を検討してみるのもよいでしょう。
方法②管理職になる
管理職になると基本給アップと役職手当によって給料を上げられます。
理学療法士を管理職候補として求人を出している施設もあります。下記は管理職候補の求人の一例です。
仕事内容 | 訪問によるリハビリ業務 (マネジメントコース・スペシャリストコース) |
給与 | 年収500万円~ |
経験・スキル | 【必須】 資格:理学療法士 【歓迎】 訪問看護業務・通所支援業務・マネジメント経験 |
今の職場で管理職を目指すだけでなく、管理職候補の求人に応募するのも給料を上げる方法の1つです。
ご自身に合った方法で管理職を目指しましょう。
方法③他の施設に転職する
他の施設に転職することによっても、理学療法士は給料アップが期待できます。
施設の中には給料を高く設定していたり、インセンティブ制度を導入しているところがあります。
理学療法士が働ける施設の種類は以下の4つです。
理学療法士が働ける施設
- 訪問リハビリステーション
- クリニック
- 病院
- 介護施設
下記に施設ごとの特徴や想定される給与額をまとめた表を記載します。
参考にしてください。
施設名 | 特徴 | 給料相場 |
訪問リハビリステーション |
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クリニック |
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病院 |
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介護施設 |
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転職は履歴書を作成したり、面接を受けたりと、何かと手間がかかるため面倒だと感じる方も多いのではないでしょうか。
一歩踏み出した先にはご自身の希望するキャリアや、仕事に見合った給料が待っている可能性があるため、ぜひ勇気を持って一歩踏み出してみることをおすすめします。
具体的な対処法については、下記の記事をご覧ください。
関連記事:転職がめんどくさい!行動に移せないときの対処法5選
方法④医療関係企業に転職する
医療に関係する企業に転職しても、理学療法士は給料を上げられます。
一般企業の中には、理学療法士として培った専門的な知識や経験を希少価値として扱ってくれるところがあるのです。
理学療法士が高収入で活躍できる企業には、以下のものが挙げられます。
理学療法士が活躍できる企業
- コンサルティング会社
- 医療機器メーカー
- IT企業
コンサルティング会社
コンサルティング会社では、理学療法士としての知見を活かし、法人・個人に対して専門的なアドバイスを行います。
下記に理学療法士のスキルを持った人を募集している、コンサルティング会社の求人の一例を紹介します。
参考にしてください。
仕事内容 | 医療機関向け経営支援コンサルタント |
給与 | 年収500万円~800万円 月給制 月給 335,183円~ 基本給 \272,179~ 固定残業代 \63,004~を含む/月 通勤手当 会社規定に基づき支給 |
求める能力・経験 | 【必須】 ■医療現場でのご経験(例:理学療法士・臨床工学技士等) ■マネージメントのご経験 【歓迎】
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医療機器メーカー
医療機器メーカーも、理学療法士の知見を活かせる仕事です。
医療機器は慎重な取り扱いが必要で、販売時などに詳しい説明ができなければならず、理学療法士で培った実践的な知識を活かせるでしょう。
理学療法士のスキルを持った人を募集している医療機器メーカーの求人の一例を紹介します。
仕事内容 | 医療機関において、担当する治験がスムーズに進行するようコーディネートする仕事。 |
給与 | 年収300万円〜500万円 |
求める能力・経験 | 【必須】
臨床工学技士/診療放射線技師/准看護師/作業療法士 理学療法士/臨床心理士/管理栄養士/MR・MS経験者 医療事務/医療機器営業経験者(医療関連資格不問) |
IT企業
IT企業の中には、医療とテクノロジーをかけ合わせた「医療テック」に力を入れている企業もあり、現場を知っている理学療法士は貴重な存在といえます。
理学療法士のスキルを活用できる、IT企業の求人の一例を紹介します。
仕事内容 | 介護事業所に提供するサポートサービスの機能開発・改善業務 |
給与 | 年収400万円〜700万円 |
求める能力・経験 | 【必須】以下の経験
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方法⑤副業をする
理学療法士の自由時間の多さを利用して、副業をおすすめします。
理学療法士が稼ぎやすい副業は、以下のとおりです。
理学療法士が稼ぎやすい副業
- セミナーや勉強会
- スポーツトレーナー
- ウェブライター(医療系の記事担当)
上記の副業は理学療法士のスキルを活かせるため、高単価が期待できます。
他にも理学療法士の知識を活かしてSNSで情報発信を行うなどの副業もあります。
ご自身に合う副業をリサーチして検討するとよいでしょう。
副業をする際は次の2点に注意しましょう。
- 勤務先の許可を得る
- 副業での所得が年間20万円を超えた場合、確定申告をする
勤め先が副業禁止であるのにも関わらず副業をしてバレてしまった場合、ペナルティを受ける恐れがあります。
確定申告をしないと税務署によって罰金を受けるため、年間20万円以上を稼いだ場合は必ず行ってください。
方法➅異業種に転職する
思い切って異業種に転職するのも収入を上げる方法の1つです。
高収入を目指す場合は未経験で年収を上げるのは難しく、業種に合ったスキルが必要です。
下記IT系の平均年収をまとめた表では、スキルレベルによって大きな収入差があることがわかります。
スキルのレベル | 平均年収 |
新人・初級者レベル | 437万8千円 |
若手人材レベル | 499万2千円 |
中堅人材レベル | 576万円 |
チームリーダーレベル | 726万千円 |
指導者・幹部レベル | 937万8千円 |
国内で著名なレベル | 1,129万9千円 |
経済産業省|IT関連産業の給与等に関する 実態調査結果 より独自に作成
異業種に挑戦する場合、スキルを身につけることを含め、キャリアをしっかりと形成しなければいけません。
- どうやってキャリアを設計すればいいか分からない
- 自分に合った仕事が分からない
と悩む方は、キャリアコーチングでキャリア設計のプロからアドバイスを受けてください。
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本記事では、理学療法士の給料が上がらない原因や、収入を上げる方法などについて解説しました。
理学療法士の給料が上がらない原因
- 理学療法士の数が飽和しているから
- 法律によって医療費が下がっているから
- 仕事量を増やせないから
- スキルが給料に反映されないから
- 開業できないから
理学療法士が給料を上げる方法
- 上位資格を取る
- 管理職になる
- 他の施設に転職する
- 医療関係企業に転職する
- 副業をする
- 異業種に転職する
理学療法士として働いている方や、理学療法士を目指している方は、「給料が上がらない」からと悲観的にならずに、解説した対処法を実践してみてください。